国別影響度要因分析(対策開始時状況やBCG接種影響など)

新型コロナウイルスの影響は、国によって大きく異なります。 それは様々な複合要因によると想定されますが、影響ありそうな事項、巷の説含め検証してみました。(参照値一覧は6/25時点

メガクラスターなどによる地域差

急激な感染拡大が見られた国でも、実は特定のクラスター起因や特定の地域に大きく偏りがある場合があり、国別に比較する場合には注意が必要です。
ここでは、韓国イタリアブルネイの事例をご紹介します。

韓国のメガクラスター

韓国は世界的に早い段階で感染確認が急増しましたが、一部欧米諸国よりは感染爆発を抑えられました。最初の急増においては、同じ場所で発生しているクラスターの割合が非常に大きく、これに対応できたことが抑え込みの一因と言えるかと思います。

上のグラフの一点斜線で示す大邱では新興宗教の集会における感染が殆どで非常に多い割合になっており、慶北においても関連する病院の院内クラスターが殆どでその割合も多く、その他の地域でも関連する感染が確認されていました。
点線がその2地域を合わせたものとその他になりますが、合せると感染確認は全体の約4分の3、死亡者は約9割をもしめ、首都ソウルを含む他のエリアだけではタイとほぼ同様の推移で、感染確認はやや多く、死亡者はやや少ない状況でした。

全体の死亡者が比較的少ないのは大邱で感染確認された信者が致死率が低い20代に多かった為で、慶北では院内感染における高齢者の犠牲者が多かった為、2地域での死亡の割合が高くなっていました。

イタリアのメガクラスター

イタリアではロンバルディア州在住者に初の陽性確認が認められ、その関連可能性ある全員無症状でも検査実施され陽性・死亡者が多く確認された背景があり、5/21時点でも1州だけで42%、関連ある2州で半数以上を占める状況になっています。

初確認者は当初はインフルエンザとして処方され通常生活を行っていた事もあり、既に蔓延していた可能性が高く、数日間で数万人に検査実施し数千人の陽性が判明、そうなると抑えきれなかった可能性があります。 初の死亡者確認も、初確認者と同じ病院で以前からの肺炎患者の死後検査で判明とのこと。
多くの人が一気に病院に訪れた事で、院内感染や医療崩壊も生じたようで、特定州とそれ以外では推移にも違いがみられます。

マレーシアの宗教行事クラスターのブルネイ等への拡散

2/27~3/1にマレーシアの首都クアラルンプールのモスク(イスラム礼拝所)で行われた大規模宗教行事に、国内外から約1万6千人が参加し、3/16時点で参加者のうち、マレーシア人338人の感染が確認され、ブルネイからの48人、シンガポールからの5人にも帰国後に陽性が確認されました。
ブルネイでは国内の全感染者の大半をこの集会の参加者そその接触者が占める状況で、その他もほぼ帰国者・入国者のみとなっており、これらの対象者を厳格に隔離し、退院者に対しても監視用リストバンド等活用により制御し、市中感染を防いだようです。

対策開始のタイミング

同じ対策を行ったとしても、既に感染が広がってしまっていると影響に差が出ることが想定されます。
ここでは、入国制限の状況を確認した上で、対策開始時の状況対策開始のタイミングの影響への相関確認、およびその他の対策についてご紹介します。

入国制限の時期と状況

対策としても様々なものがありますが、生じてから抑えるよりも、そもそも危険性を入れない入国制限(いわゆる水際対策)がやはり効果的なようです。それにも、入国者の体温をサーマルカメラ等でチェック、感染拡大国からの入国拒否、全ての国からシャットアウト等の段階があります。

our world in dataでの公開情報により制限状況判明している全150か国の制限レベル推移を確認してみると、概ね2月初旬頃より特定国に対して実施する国が増え、3月中旬ごろには多くの国で国境封鎖となり、5月に入り徐々に解除されてきている状況ですが、全般的にヨーロッパ・アメリカでは3月中旬になって実施というところも多いようです。

もう少し詳しく見てみると、確かに左の表のように制限実施が遅れた国はヨーロッパに多く、アフリカやアジアで早い傾向はありますが、右の表のように逆に人口当りの死亡者数などの順でみると、実はイタリアやフランスなどでは早い時期に制限を行っていても、感染爆発が生じた場合がみられた状況もありました。

対策開始時の感染拡大状況

参考までに、要因候補として「対策開始時の人口百万人当たりの累積感染者数」を、影響を示す値として、なるべく他の影響を避け「死者初確認の30日後の累積死亡者数」を設定し、その関係を確認した状況をご紹介します。
但し対象国は日本の大使館情報等により独自で確認を行った約100か国に限られており、それによると以下に示すように対策開始において全般的にアジアが早く欧米が遅い傾向がみられましたが、後に得られた英国情報機関による調査ではむしろ逆の傾向も見られ、情報収集の状況に応じて結果は変わる前提でご参照ください。

相関係数は 0.507(0と1の間で1に近いほど相関有)となり、やはりある程度の相関が認められました。
エリア別でグラフに示してみると(値の差が大きい為、対数軸利用)、全般的に死者数を抑えられているアジアや東欧は感染者確認数が少ないうちに対策実施し、比較すると東以外のヨーロッパ諸国の多くは既に一定数感染が広まってから対策実施となっていた様子が確認できます。

なお対数ではない通常軸で見ると、十数か国は極端な状況を示していますが、他は差はあまりなく、横軸の値で縦軸の値を予測するための近似曲線の決定係数 R2は 0.256(0と1の間で1に近いほど実際を適切に表現) であまり高くはありません。

対策開始タイミング

感染者数が少ないうちに対策するには、如何に早く実施するかが重要です。対策として、感染可能性のある外国人の入国を制限する「水際対策」なども含めると、感染者確認前のかなり早い段階から対策実施している国も多く、今だ死者ゼロでグラフに表示もできない国もあります。

「対策開始日の感染者初確認日との差」と今回は期間の要素も踏まえた「人口百万人当り累積死者数」の関係を確認すると、相関係数は 0.335となり、弱いながらもやや相関が認められました。

中央アジアを始め、東以外のアジアおよび東欧諸国の半数近くで、グラフ中央の感染確認日を示す0日よりも早い時期に対策実施し、死者数も抑えられている事が確認できます。

こちらも、対数ではない通常軸で見ると、感染確認前か後かで大きな違いがありますが、全体で近似曲線を求めると、R2は0.112となってしまいます。

なお、対策の定義や公表状況によっても実際と異なる場合があり、一部の国だけが極端に感染・死亡者数が多い状況や、この検証後に判明した中南米やアフリカなどの状況も含めると、更に相関は薄くなる可能性もあり、少なくとも因果関係を示すものでもありません

その他の対策

他の多くの制限項目については、香港・マカオ・台湾等の中国本土と別政策の地域含めた東アジアで2月初旬より実施、他は殆どの国で3月中旬頃より厳しく実施している状況でした。

また、多くの国が実施している参照サイトでまとめられている項目以外にも、例えば「帰国者・入国者の一定期間隔離」や「マスク着用義務化」なども一定の効果はありそうです。

但し、いずれにしてもこれらの状況が実際に影響を及ぼしたと証明する事は不可能な事は注意が必要です。

BCG接種方針影響

過去実施による適用年齢等

現在の出生時における接種方針区分における、「THE BCG WORLD ATLAS」のデータベースで明示されている範囲での導入年・推奨停止年から、2020年時点での概ね接種適用されていると想定される年齢を示します。

これにより現在推奨停止し若年層は接種していなくても中年~高齢で接種、逆に現在実施していても中年~高齢では接種していないといった国も多く、新型コロナウイルスが比較的高齢者に影響が大きい事も踏まえると、現在の接種区分で論じること自体には、あまり意味がないようにも思われます。
敢ていえば「とにかく予防を」とするか「明確な効果不明のものは行わない」といった国民性の違いが多少出ているかもしれませんが、実際に効果があるかはこれからの検証が待たれるところのようです。

現在のBCG接種推奨区分別状況

一応、相関を強引に確認してみると以下のようになっています。

一律に比較できる数値はない為、便宜的に実施状況を数値にあてはめ(現在の実施方針区分を大きく10の差、そのうち対象年齢などによる設定小分類で1の差とした、あくまでも設定値)、「人口百万人当たりの死者累計」との関係をみると、確かに相関係数は 0.618と、設定数値上は相関が認められる値となりました(もちろん因果関係を示すものではありません)

しかし、現在の大きな状態区分としては同じでも、現在実施における導入年や、推奨停止ながらも過去実施していた際の導入及び停止年の違いは大きいと想定されるものの、タイミング不明も多く、可視化グラフ上でもその差はあまり認められません。

アジア、ヨーロッパ、オセアニア、北アメリカの99か国限定の情報です。
初期順は対策開始日の感染者初確認日との差の日数順としていますが、 ラベル下▲▼クリックにより並べ替え可能、「Column select」ボタンで表示項目の選択・解除、列ラベルドラッグ&ドロップで列順変更可能で、(実装の都合上、状況一覧と異なり)初期表示15件ページ送り式になっていますが、プルダウンより表示数変更できます(キャッシュに保存されます)。
※初月の死者数:死者初確認30日後の人口百万人当り死者累計、※BCG接種:下限から上限の年齢は原則接種、ただし強制停止でも推奨により高接種率の場合や、現在実施でも実際には未接種も有、空欄は不明(現在実施でも若年層のみの可能性有)※国Noはエリア毎人口多い順

数値の多い順背景色凡例:
 1~5  6~10  11~15  16~20
国名(..:略)対策開始日初確認日差死者/百万人死者/1週前陽性BCG現方針BCG接種上限BCG接種下限エリア国Noiso code参考Link
トルクメニスタン2/04-1420.0-A.現在実施亜_中15_05TKM
モンゴル1/01-690.00.0A.現在実施720亜_東11_07MNG
ブルネイ1/01-696.92.1A.現在実施690亜東南12_11BRN
カザフスタン1/06-697.10.9A.現在実施亜_中15_02KAZ
スロバキア1/01-665.11.8B.強制停止678欧_東24_09SVK
タジキスタン2/26-655.51.0A.現在実施亜_中15_03TJK
オーストリア1/01-5676.94.1B.強制停止6830欧_西21_05AUT
東ティモール1/28-540.00.0A.現在実施亜東南12_10TLS
ミャンマー(ビルマ)2/01-520.12.3A.現在実施亜東南12_05MMR
パプアニューギニア1/31-500.00.0A.現在実施阿西亜32_01PNG
インドネシア1/15-479.36.3A.現在実施210亜東南12_01IDN
バングラデシュ1/22-479.41.6A.現在実施410亜_南13_03BGD
キルギス2/05-436.41.6A.現在実施亜_中15_04KGZ
ポルトガル1/26-37151.04.1A.現在実施欧_南22_04PRT
アイスランド1/23-3729.30.6D.不明欧_北23_10ISL
ボスニア・...1/31-3552.15.5A.現在実施700欧_南22_07BIH
パキスタン1/24-3417.02.4A.現在実施420亜_南13_02PAK
ブルガリア2/03-3429.96.0A.現在実施欧_東24_08BGR
パレスチナ2/02-331.00.7A.現在実施亜_西14_12PSE
バーレーン1/23-3239.40.3D.不明亜_西14_17BHR
クウェート1/23-3278.20.9A.現在実施亜_西14_13KWT
オランダ1/27-32355.712.4C.特定実施41欧_西21_03NLD
イスラエル1/23-3035.61.6B.強制停止6538亜_西14_09ISR
アゼルバイジャン1/30-3016.51.6A.現在実施亜_西14_07AZE
クロアチア1/27-3026.14.7A.現在実施720欧_南22_06HRV
トルコ2/14-2759.32.8A.現在実施680亜_西14_01TUR
アイルランド2/04-26348.36.8A.現在実施650欧_北23_06IRL
ニュージーランド2/02-264.61.9B.強制停止4430阿西亜31_02NZL
カナダ1/01-25224.08.5C.特定実施8055米_北41_02CAN
オマーン2/01-2427.40.6A.現在実施亜_西14_11OMN
イラン1/28-23117.45.1A.現在実施360亜_南13_04IRN
モルディブ2/14-2314.80.4A.現在実施亜_南13_09MDV
イラク2/02-2331.15.5A.現在実施亜_西14_02IRQ
フィジー2/28-210.00.0A.現在実施阿西亜32_02FJI
台湾1/01-200.31.6A.現在実施690亜_東11_05TWN
インド1/15-1510.54.1A.現在実施720亜_南13_01IND
レバノン2/07-154.72.2C.過去も無亜_西14_10LBN
ウズベキスタン3/01-150.60.3A.現在実施830亜_中15_01UZB
ラオス3/11-140.00.0A.現在実施亜東南12_08LAO
アルバニア2/25-1315.62.7A.現在実施欧_南22_08ALB
ルーマニア2/14-1380.06.9A.現在実施920欧_東24_04ROU
モルドバ2/24-13121.54.0A.現在実施欧_東24_10MDA
スイス2/15-11194.05.4B.強制停止5533欧_西21_06CHE
日本1/05-107.65.5A.現在実施730亜_東11_02JPN
タイ1/03-100.81.9A.現在実施430亜東南12_04THA
マレーシア1/16-93.71.4A.現在実施亜東南12_06MYS
ヨルダン2/23-90.90.9A.現在実施亜_西14_06JOR
シリア3/14-90.44.0A.現在実施亜_西14_05SYR
イタリア1/23-8573.514.6C.特定実施5019欧_南22_01ITA
モンテネグロ3/10-814.32.8D.不明欧_南22_11MNE
ベルギー1/28-7838.116.1C.特定実施747欧_西21_04BEL
韓国1/14-65.52.3A.現在実施450亜_東11_03KOR
ドイツ1/22-6106.44.8B.強制停止5922欧_西21_01DEU
ハンガリー2/28-659.314.1A.現在実施670欧_東24_06HUN
キプロス3/05-521.71.9D.不明亜_西14_18CYP
フィンランド1/27-359.04.6B.強制停止7914欧_北23_04FIN
アフガニスタン2/23-215.92.3A.現在実施亜_南13_05AFG
ギリシャ2/25-218.26.0A.現在実施欧_南22_03GRC
フランス1/23-2455.318.8B.強制停止7013欧_西21_02FRA
リトアニア2/26-228.34.3A.現在実施欧_北23_07LTU
サンマリノ2/27-11,237.66.1D.不明欧_南22_14SMR
スペイン1/31-1606.011.6B.強制停止5539欧_南22_02ESP
アンドラ3/02-1673.06.1B.強制停止欧_南22_13AND
スロベニア3/04-153.47.4B.強制停止7315欧_南22_10SVN
セルビア3/06-138.72.1D.不明欧_南22_05SRB
ノルウェー2/26-145.72.9B.強制停止11欧_北23_05NOR
スウェーデン1/31-1511.09.7B.強制停止8045欧_北23_02SWE
チェコ3/01-131.73.4B.強制停止6710欧_東24_05CZE
中国1/0103.25.5A.現在実施亜_東11_01CHN
ベトナム1/2400.00.0A.現在実施350亜東南12_03VNM
フィリピン1/30010.84.4A.現在実施亜東南12_02PHL
ブータン3/0600.00.0A.現在実施410亜_南13_08BTN
ルクセンブルク3/010175.72.7B.強制停止欧_西21_07LUX
デンマーク2/270104.14.9B.強制停止7434欧_北23_03DNK
オーストラリア1/2504.01.4B.強制停止6540阿西亜31_01AUS
バチカン3/0810.00.0D.不明欧_南22_16VAT
サウジアラビア3/06338.71.0A.現在実施520亜_西14_03SAU
マルタ3/11320.41.4A.現在実施欧_南22_12MLT
ポーランド3/10636.34.6A.現在実施650欧_東24_03POL
カタール3/08734.40.1A.現在実施亜_西14_16QAT
ラトビア3/11815.92.7A.現在実施750欧_北23_08LVA
ウクライナ3/12824.03.2A.現在実施430欧_東24_02UKR
スリランカ2/0690.50.6A.現在実施亜_南13_07LKA
エストニア3/101152.03.5A.現在実施欧_北23_09EST
シンガポール2/07144.40.1A.現在実施650亜東南12_09SGP
アルメニア3/1615130.32.2A.現在実施220亜_西14_15ARM
北マケドニア3/1820120.55.9A.現在実施700欧_南22_09MKD
ロシア2/212057.31.5A.現在実施欧_東24_01RUS
ジョージア3/21233.51.6A.現在実施亜_西14_14GEO
アラブ首長国連邦2/232730.80.7A.現在実施亜_西14_08ARE
ベラルーシ3/272837.80.6A.現在実施欧_東24_07BLR
カンボジア3/07390.00.0A.現在実施亜東南12_07KHM
イギリス3/1241632.314.4B.強制停止15欧_北23_01GBR
アメリカ3/0544366.25.7C.過去も無米_北41_01USA
ネパール3/20550.80.3A.現在実施亜_南13_06NPL
モナコ127.45.1D.不明欧_西21_08MCO

感染症のように多くの要因が複雑に関連し、それを評価する値にも様々な要素が含まれる事象については、単純に解析する事は困難です。ここでは参考になると感じた記事や情報などをご紹介したいと思います。

神戸大学中澤先生による新型コロナの読み解き方

記事概要

NATIONAL GEOGRAPHICにおける10回に渡る連載記事の私が気になったポイントをご紹介。詳しくは掲載日にリンクの各記事をご確認下さい。

適切な専門家に聞く「新型コロナ」の読み解き方(5/12)
報道では実は専門家ではないコメンテーターなどにより科学的根拠がない情報発信も多いが、感染症疫学の特に数理モデルの専門家は非常に少なく、現状対応で余裕がないのが実情。そこで保健学研究科の中澤港教授に伺っていく。
新型コロナの厄介さと怖さを知る:2つの致命割合CFRとIFRとは(5/13)
潜伏期間中央値5日(インフルエンザは2日)で、西浦さん達の調査によると、発症間隔中央値4日とそれより短く、発症前の人からの感染が約半分
致命割合は確定患者分母のCFR(現1~10%)か関連死含む推定のIFR(現推定0.3~0.6%)か等で異なり、インフルエンザ(拡大解釈CFR 0.1%・推定IFR 0.005~0.01%)等と比較時に対象異なる報道有要注意。
新型コロナ、年齢や持病など「重症化リスク」の真相(5/14)
高齢者や基礎疾患有に致死割合高いとされているが、だれでもかかる病気で、若者でも0.2~0.4%・基礎疾患なくても0.9%は低くはないと捉えるべき。
新型コロナの治療薬や「BCG仮説」で気をつけたいこと(5/15)
治療薬やBCG仮設などの地域相関研究は、最低限、症例対照研究、望ましくはランダム化比較試験などができない限り、因果関係を議論できるものにはならない
新型コロナの広がり方:再生産数と「密」という大きな発見(5/16)
基本再生産数R0は現在SARSの平均約3と同程度と考えられているが、分散が極めて大きい事が特徴で、一部の人がたくさんの感染者を生み出す状況が含まれていると想定され、西浦さんたちにより特定された3密では約30倍になることも
新型コロナPCR検査の状況を読み解く「3種類の検査目的」(5/17)
日本において種々の課題により必要な人が検査を受けられない事態が生じたのは問題あるが、一般まで多く検査をしたとしても実際の感染者数が桁違いに多いということは状況的に考え難く、医療従事者のうちのハイリスク者への頻繁な検査で伝搬3分の1減らせるとの試算有。
新型コロナの感染者はどのぐらいいるのか:検出率と抗体検査(5/18)
各国の年齢割合で重みづけした致命割合IFR(日本1.6%)を死者数で割ることによる2週間前の感染者数推定で確定数を割った検出率は、日本約25%。韓国49%は別としも、ドイツでも15.6%、イタリア3.5%、イギリス1.2%等に比べ高い。但し判別されていない死者数を考慮に入れる場合、日本は速報が2カ月後と遅い課題がある。神戸の病院で外来検査で3.3%陽性との数字があるが検査キットの精度などにもよるのでこの数字が一人歩きするのは危険。
新型コロナ、クラスター対策と「8割減」の本当の意味(5/19)
日本のようにスーパー・スプレッディングをクラスター対策で捉え、他のランダムリンクは対人的距離が遠い文化的背景などより再生産数Rが1未満であれば収まりえるが、ハグ習慣などがある欧米はランダムリンクが1以上であった可能性。これが正しければ株の違いによる感染力の差などの仮設は話が変わる。
クラスター対策は連鎖を断つだけでなく、その知見で連鎖を予防することに大きな意義があり、対策班の高い功績であるが、3月中旬以降の帰国者への対応には機能しきれなかった状況がある。
「コロナ禍」はいつまで続く?:2022年終息説ほかいくつかのシナリオ(5/21)
ワクチンはすぐにできる保証はないのでしばらく抑え込みと増加の繰り返しが予測される。他国では日本で重視していたRの分散の高さを考慮していないのが特徴であるが、日本ではICT活用や保健所機能強化などによる「効果的クラスター対策」などがあれば、二度目の緊急事態宣言は避けられるはず。
新型コロナ「接触通知アプリ」はどれほど有効なのか(5/22)
スマホアプリなどで効果的接触者追跡ができれば、ロックダウンしなくてもRを1未満にできるというシミュレーション結果もあり。中国・韓国などでは街頭カメラなどと併せて徹底追跡。シンガポールもアプリ活用で追跡試みたがインストール者数が不十分でロックダウンに至った。
AppleとGoogle共同開発でスマホOSに組み込まれたしくみの活用や、具合が悪い際の自宅待機、マスク・手洗い習慣、3密を避けるなどの行動変容も重要。そして感染者を差別しない事も。

潜伏期間と発症間隔イメージ(5/13記事内)

感染拡大の違いイメージ(5/16記事内)

記事内紹介「感染者検出率」論文データ

中澤先生の5/18の記事で、ゲッチンゲン大学フォルマー教授が4/2/に発表した世界40か国の感染者検出率試算を掲載

感染致死率推定検出率推定感染人口比
イタリア1.383.505.00
スペイン1.211.6812.24
アメリカ0.961.593.58
フランス1.202.623.09
イラン0.432.402.21
イギリス1.091.193.15
オランダ1.141.883.94
ドイツ1.3015.580.55
ベルギー1.142.005.50
スイス1.137.062.72
トルコ0.550.1213.23
ブラジル0.590.950.28
スウェーデン1.157.630.58
韓国0.9649.470.04
ポルトガル1.323.701.98
インドネシア0.420.530.11
オーストリア1.1511.970.94
カナダ1.054.950.46
デンマーク1.1412.950.41
フィリピン0.360.760.25
ルーマニア1.092.450.48
エクアドル0.470.373.46
アイルランド0.842.632.49
日本1.6025.160.01
ドミニカ共和国0.480.205.17
イラク0.230.700.24
ギリシャ1.3410.570.12
エジプト0.341.460.05
アルジェリア0.430.580.28
マレーシア0.457.090.12
ノルウェー1.0137.760.23
モロッコ0.470.500.33
インド0.411.680.01
ポーランド1.067.680.08
チェコ1.0913.960.22
ペルー0.542.090.15
パナマ0.541.242.20
メキシコ0.481.420.06
アルゼンチン0.671.690.14

後述の論文に掲載されている年齢別の感染致命割合(IFR)が世界中のどこでも正しいとして、各国の年齢別人口で重み付けした感染致命割合(IFR)を計算したもの。
症状発現から死亡まで18日・発症から4日後に検査されたとして、年代比で補正した感染致死率と3/31の公表死者数を元に推定した3/17の推定感染者数と実際の陽性確認者数から求めた割合。
※但し3月以降の陽性確認から死亡までの実際の期間は国により大きく異なる

記事内紹介「感染致死率」論文データ

上述で参照されたインペリアル・カレッジ・ロンドンのチームが3/30に発表した論文における年齢別の感染致命割合(IFR)。

年代中国実例推定感染致死率下限上限
全体2.2900.6570.3891.33
0~9才0.0000.0020.0000.02
10代0.1820.0070.0010.05
20代0.1930.0310.0140.09
30代0.2370.0840.0410.19
40代0.4430.1610.0760.32
50代1.2990.5950.3441.28
60代3.6001.9301.1103.89
70代7.9634.2802.4508.44
80才~14.7737.8003.80013.30

※中国CDCが2/11に公表したデータを基にした推定で、現状国により元状況が異なる

検査の実施数と精度について

検査の数と精度などについての記事に、検査数を増やすと、陽性と判定された中で本当に感染している割合(適合率)が低くなることが提示されています。
正確にはベイズの定理での計算によりますが、仮に表に示すような設定の場合、検査人数20人なら適合率約9割に対し、100人では5割を切る事になります。

一部では徹底した検査促進の提言もあったようですが、判定基準自体まだ曖昧である事と、医療リソースに負担をかける事を踏まえると、日本における可能性の高い人優先での検査という方針自体は妥当なのではないでしょうか。